着られなくなった着物が、今も毎日どこかで処分されています。傷んでいるからではなく、着る機会がないというだけです。多少のシミがあっても、まだ十分に着られるものも多く、柄の美しさはそのまま残っています。
そんな一枚から生まれる着物リメイク小物には、同じものが2つとありません。同じ色柄の着物から作っても、切り取る場所が少し違うだけで、まったく別の表情になるからです。
だからこそ、着物リメイク小物は「色柄」で選ぶのがいちばんの近道。この記事では、素材ごとの色柄の違いから、自分に似合う一点の選び方までを具体的に紹介します。
着物リメイク小物とは|廃棄される着物が小物になるまで

着物リメイク小物とは、役目を終えた着物の生地を再利用し仕立て直して作る、ポーチやバッグなどの日用品のことです。 着物そのものを着るのではなく、生地の色柄の美しさを小物という形で暮らしの中で使い続けます。
廃棄される着物から生まれる新しい価値
着物リメイク小物作家であるtsuneが素材として使うのは、誰にも着られずに廃棄される着物です。 行き場をなくした着物の中から色柄の美しさ、傷みやシミなどの状態を見極めて仕入れます。
仕入れた着物は、多くの工程を経て小物へと生まれ変わります。廃棄着物が、新しい価値を生み出すと同時に、日本の伝統と技術が別の形で残されていくと考えると、この上ない喜びを感じます。
6月に大阪で大量に廃棄着物を仕入れてきましたが、後日1枚1枚着物を見ながら「これはポーチにすると可愛いな」「これはバッグにしたいな」と作るものを想像しながら楽しく仕分けをしたところです。
ポーチとバッグ|毎日の暮らしで使う定番の小物
tsuneが作っているのは、主にポーチとバッグの2種類です。
ポーチは、自分の持ち物を小分けしたりまとめたりする小さな小物。バッグは、その日の装いに彩りを添え、気分を上げてくれる小物です。
飾って眺めるためではなく、毎日使ってこそ着物の生地は生きると考えています。また、和のテイストを日常で気軽に楽しめる小物です。
同じ色柄が2つとない理由

「一点もの」とよく言いますが、着物リメイク小物の場合、それは単なる希少さの話ではありません。作りたくても同じものが作れないという、素材そのものの理由があります。
反物ごとに柄の出方が違う
着物は、一反(いったん)の布から仕立てられています。 同じ柄に見えても、染めや織りには一反ごとのわずかな違いがあり、色の深さや柄の間隔は少しずつ異なります。
まして、廃棄寸前の着物は、同じものを2つ手に入れることができません。仕入れの時点でまったく同じ生地は存在せず、そこから作られる小物はおのずと唯一無二の作品になります。
仕入れた着物は、「解き」「洗い」「地直し」の工程を経て素材にしてから小物を作り始めます。このとき、素材のどこを切り取るかによってまったく別の一点になります。
一枚の着物の中でも、花が大きく咲いている部分もあれば、余白がゆったり広がる部分もあります。小物という小さな面積に、どのように柄を収めるか。柄を主役にするか、余白を生かすデザインにするかなど、その判断の1つ1つが「唯一無二」の作品に仕上がる理由なのです。
色柄の違いで選ぶ|3つの素材の魅力
着物リメイク小物を選ぶ手がかりは、まず「素材」です。 tsuneが主に扱うのは、絞り・紬・ちりめんといった代表的な着物生地の3つ。
同じ絹でも、光の受け方も手ざわりもまるで違います。好みの素材から選ぶと、自分に合う一点に出会いやすくなります。順に見ていきましょう。
絞り|ひと粒ずつの凹凸が生む陰影

絞りは、シンプルな装いにアクセントがほしい人に向いています。
絞りとは、生地を糸でくくってから染める技法のこと。染め上げた後もその凹凸の絞り目が残り、布の表面に細かな陰影が生まれます。
産地としては、愛知県の「有松絞り」や京都府の「京鹿の子絞り(きょうかのこしぼり)」が有名で、平らな生地にはない立体感があり、光の当たり方で表情が変わります。
ひと粒ずつ手で括った跡が、無地の服に合わせるだけでその一点を主役にしてくれます。同じ色でも、ふくらんだ部分と沈んだ部分でトーンが違って見えるのも面白さです。
紬|素朴であたたかみのある風合い

紬は、毎日カジュアルに使いたい人に向いています。
もともと庶民向けとして作られた紬の着物は、節(ふし)のある糸、つまりは糸が均一ではなく部分的に太くなっている箇所があります。そんな糸で織られた生地は、独特な光沢や質感を持ち、さらに「シャリ感」と言われる「しゃりしゃり」という衣擦れ(きぬずれ)の音がするのが特徴です。
産地としては、茨城県・栃木県の「結城紬」や鹿児島県(奄美大島)の「大島紬」が有名です。派手さはありませんが、その素朴さがかえって普段着になじみます。
デニムやリネンとも相性がよく、使い込むほどに風合いが増していきます。「育てる楽しみ」を味わいたい方にぴったりの素材です。だからこそ、いつもの装いをさりげなく格上げしたい人にぴったりの素材です。
ちりめん|やわらかな凹凸と、深く沈む発色

ちりめんは、落ち着いた華やかさを求める人に向いています。
表面にこまかな凹凸(「シボ」と呼びます)があり、光をやわらかく散らすため、色がぎらつかず深く沈んだように発色します。赤でも紫でも奥行きのある大人っぽい色に見えるので、柄が華やかでも品よくまとまります。
産地としては、京都府の丹後地方(京丹後市や与謝野町など)が有名で、しっとりとした絹の手ざわりも心地よく、はじめての一点にも選びやすい素材です。
オフィスや少しあらたまった場にもよくなじみます。
自分に似合う一点の選び方

素材の違いがわかったら、次はいよいよ「自分の一点」を選びます。迷ったときは、次の2つの視点で考えてみてください。
手持ちの服の色から考える
まず、いつも着ている服の色を思い浮かべてください。 小物は、毎日の装いに「もう一色」を足すもの。手持ちの服となじむか、いい差し色になるかで選ぶと、使う場面がイメージしやすくなります。
- 黒・ネイビーが多い人 → 絞りやちりめんの深い色が、上品な差し色になる
- 生成り・ベージュなど淡い色が多い人 → 紬のやわらかいトーンが自然になじむ
- カラフルな服が好きな人 → 落ち着いた色柄を選ぶと、全体のバランスが取れる
使うシーンから考える
どこで使うかを決めると、選ぶ範囲がさらに絞れます。
仕事のバッグに入れるポーチなら、落ち着いた色柄で、開けたときに気分が上がるもの。休日のおでかけバッグなら、思い切って柄の主張がある一点を主役にしても素敵です。
使う場面がはっきりすると、色柄選びの迷いもぐっと減ります。
一点ものは、迷っているうちに他の人の手に渡ってしまうこともあります。tsuneの作品は全てが一点ものであり唯一無二のため、「これだ」と心が動いたらその直感を信じてください。
色柄で選ぶことは、二度と巡り会えないかもしれない一点を選ぶことでもあるからです。
まとめ
tsuneの作る着物リメイク小物が一点ものになるのは、希少だからではなく、同じ着物が2つと手に入らないからです。廃棄されるはずだった着物が、素材である布となった時、切り取る場所によってまったく別の表情を持つ小物に生まれ変わります。
選ぶときは、絞り・紬・ちりめんなどの素材の違いを手がかりに。そして、お手持ちの服やバッグの色、そして使うシーンから考えると、自分に似合う一点が見つかりやすくなります。
tsune|着物リメイク小物では、行き場をなくした着物を素材として、ポーチやバッグなどを一点ずつご紹介しています。今この瞬間だけの色柄との出会いを、のぞいてみてください。
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